不思議なことに,扉がとじてゆくときというのは,最後の閉じる瞬間,一筋の光が見えるところばかりがスローモーションで流れていくような気がする。
科学的に検証すれば,指を挟まないように扉が閉じる瞬間だけゆっくりになるように作られているのだと言われてしまうのかも知れないが,そうでなくても,私たちの感覚として,最後の一筋の光だけが矢鱈と印象に残るのではないかと思う。
年齢や時の流れとは関係なく,環境というものによって,かつては溢れ出てくる泉のようにどこからともなく湧いて溜り,辺り一帯を潤していたはずなのに,泉がだいぶ小さくなって漸く,ずいぶん前から湧き出るものがなくなっていたことに気づいたりするのだ。
泉が乾ききる瞬間,扉が閉じる瞬間のように,一筋の光が見える。
いつかまた何処かで誰かに触れられた瞬間に,何事もなかったかのように,全てが流れだすのを,信じている。
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