2009/10/26

恩讐のかなたに

菊池寛の小説で,恩讐の彼方にというのがあった。

ストーリーの筋に力を置く彼の作風は,神は細部に宿るとして細やかな表現に神経を尖らす多くの小説家とはまったく違ったものだったように思う。

こんな風に書くのも,彼の作品を読んだのはずいぶんと前のことだからだ。

ずいぶん前に読んだきりなのに,ふと思い出すことがある。不思議なものだ。とても感動した作品であってもあまり思い出さないこともあれば,たいしたことないように思っても時折思い出してしまうものもある。

恩讐の彼方に,という作品の,トンネルを掘っていく作業のなかで,世間の人々の動きが非常に心に残る。

拒絶し,興味を抱き,熱狂し,そして去っていく。


昔は身近に感じられた理想が,徐々に遠くなっていき,昔遠くにあったはずの世間が,どんどん近づいてくる。

世間様,かかってきやがれ,ロックンロール。
モヒカン頭で抵抗してやるぜい。うそ。坊主頭で抵抗してやるぜい。

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