2010/02/26

蚊がいる。風呂にいる。天井に。ずっと。相変わらず天井に張り詰めた水滴の一つに閉じ込められたまま。琥珀に閉じ込められた虫のように。逃れようと羽を動かしているが,水滴の形が変わるばかりで飛び立てない。

もう死んでしまったかな。そう思いながら,毎日みている。もう動かない。ほらだめだ。琥珀のように閉じ込められてしまうのだ。息だってできないではないか。

そう思っていると,ふっと動くのである。まだ生きているのか。どうやって生きているのだろう。そのうちに蚊のことを忘れて風呂から上がってしまう。

また今日,また思い出した。まだかすかに動いている。流してしまおうか。そう思ってよく見ると,水玉の中に卵を生んでいるのである。

この小さな水滴の中で卵がかえってボウフラになって鬼ボウフラになってかが出てくるのだろうか。

卵が孵るところを見てみたい。

そんなわけで今日も蚊は,天井に張り付いた,それは小さな小さな水たまりで,生死の境をさまよっているのである。

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