2010/04/06

affordance

アフォーダンスという言葉が新聞に紹介されていた。見ただけでつい行動を引き起こしてしまうような物の形のことをいうようだった。

この話を聞いて思い出すのは星新一のショートショート。たしか,鎮魂歌というタイトルだったか。有名な科学者が税金を大量につぎ込んで作った機械。そこにはボタンと手がついている。そのボタンを見るとつい押してしまう。押しこまれると,手が元に戻す。ただそれを繰り返すだけの機械。批判の嵐にさらされたが,その機会はオブジェとしておかれ続け,通る人は吸い寄せられるようにボタンを押す。そして手が元に戻す。何百年か経って,人類がいなくなった。木の枝が風に吹かれてボタンを押し,手が元に戻す。そしてさらに数百年。その機械は,ボタンを押されてもいないのに動き出し鎮魂歌を流し,そして永遠に動かなくなった。といったような話だ。

この話に出てくるボタンは,アフォーダンスの塊なのだろう。

ボタン。しかしこれはどうしようもなく誘惑の塊だ。ボタンを見ると,押したら何が起こるのかドキドキしてくる。押さないでくださいと書いてあるとなおさらだし,書いてなくても,ボタンから伸びているコードが壁に埋まって消えて行くところなどを見ると,ひょっとしたらどこかでロケットでも発射するんじゃないかとわくわくしてくるのであるが,大人は素知らぬ顔で通り過ぎなければならないのだ。

まったくひどい話だ。

ボタンに限らず,誘惑に耐えなければならない形は他にもいろいろある。人によっても違うだろう。
人が触ったところだけ色が変わっているアート作品などを見ると,笑ってしまうときがある。

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